オ()レは約1年ぶりに京都の実家に帰ってきた。大学は出たが、()子供の頃から好きだった映画の世界に進みたいと思いながら、フリーター生活を送っている。
母は中学生の頃、父()は3年前に亡くなった。父は男手一つで子供たちを必死で育てた。父が()残した家を姉が守ってくれていたのだが、結婚が決まり、更に夫の海外出張が決まったため、姉はこの家を売ろうと思うと告げた。オレは父の遺品()から「思いでの記」と題されたノー()トを見つけた。そこにはオヤジの恋の思い出が記されていた。
23歳の父。若い頃から映画が大好きな父は、 ある()日映画館で勇さ()んという年長の()男()性に体を触られる。慌てて映画館を出てきた父を追いかけてきた勇さんと出会()い、初めて男性との接触を体験した。その後、父()は()勇さんを誘って歩く中()、手()を繋ごうと()するが、勇さんは周囲()の目を気にしそれを跳ね除け()る。父の恋は儚く散った。
それから父は行きずり()の恋を()繰り返した。そんな時、ゲイバーで知り合った戸田と映画の話で盛()り上がり、ホテルへ行った。彼の変態的なセックスが父には新鮮だったが、彼は既婚者だっ()たのでうしろめたさを感じた。戸田との関係を続けな()がらも、彼にとって父は単なるセフレにすぎず、()やがて二人は別れた。父はオレの母()と結婚し…()。